日本の食卓に欠かせない多種多様な野菜たちは、農林水産省による「指定野菜制度」によってその安定供給が支えられています。本記事では、この制度の下で指定されている野菜の種類と、制度の概要を紹介します。また、農業生産者や消費者に影響を与える制度のメリットとデメリットにも焦点を当てます。日本の農業と食文化に深く根差したこの制度の全貌に迫ります。
農林水産省によって指定されている野菜
指定されている野菜は以下の14品目です
- キャベツ:年間を通して需要があり、さまざまな料理に利用される基本的な野菜です。
- きゅうり:サラダや漬物など、生食や加工用として広く使用されます。
- さといも:煮物や汁物など、和食でよく使われる伝統的な根菜です。
- だいこん:生食、煮物、漬物など多岐にわたる料理に使われる野菜です。
- たまねぎ:炒め物、サラダ、スープなど、幅広い料理に欠かせない野菜です。
- トマト:生食はもちろん、加工用としても多用され、世界中で人気のある野菜です。
- なす:焼きナス、煮浸し、揚げ物など、日本料理に広く使われます。
- にんじん:サラダ、煮物、スープなど、多様な料理に使われる根菜です。
- ねぎ:風味付けやトッピングとして、さまざまな料理に使用されます。
- はくさい:お鍋や漬物など、冬の定番野菜として人気です。
- ばれいしょ(じゃがいも):フライドポテト、マッシュポテト、煮物などに使われます。
- ピーマン:炒め物や肉詰めなど、彩り豊かな料理に利用されます。
- ほうれんそう:生食、炒め物、おひたしといった様々な料理に使われる野菜です。
- レタス:サラダの基本的な材料で、生食用として広く利用されます。
です。
これらの野菜は特に消費量が多いことが理由で指定されています。
また、指定野菜の価格が安くなった際に、翌年も野菜を作り続けるように、指定産地の農家に支払われる制度があります。
指定産地は、令和3年5月7日時点で890箇所に指定されています。
指定野菜制度とは?
指定野菜制度は、1966年に「野菜生産出荷安定法」に基づいて設けられた制度です。
この制度は、特に消費量の多い野菜を国が指定し、
その野菜を毎年大規模に生産する産地を「指定産地」として定めています。
指定野菜の価格が一定基準を下回った場合、補給金が支給される仕組みがあります。
この補給金は、農家、道府県、国が積み立てた資金から供給され、販売した野菜の市場平均価格が保証基準額(平均価格の90%)を下回った際に、出荷数量に応じて差額が補填されます。
この制度により、天候などの不確定要素に左右されることなく、農業経営が安定しやすくなるメリットがあります。
しかしながら、指定野菜を栽培するには一定の条件があります。
指定産地での生産が必要で、
農家は「農協、事業協同組合及びその連合会」
または「対象野菜の作付面積が2ヘクタール以上の者」
といった要件を満たさなければなりません。
また、出荷先も機構が定める市場に限られます。
資金の積み立てに関しては、農家、道府県、国がそれぞれ負担する割合が設定されています。
指定産地にはいくつかの課題も存在します。
連作による地力の低下や病害虫の多発、農家の高齢化による労働力不足、作付品目転換に伴う作付面積の減少など、多くの問題が指摘されています。
これらの課題に対処するため、新規就農者への研修や資金提供などの取り組みが行われていますが、効果が即座に現れるわけではなく、今後も様々な対策が求められています。
この制度は、食料自給率の向上を目指し、産地の強化や基盤の強化につなげていくことが目的ですが、指定産地の数や構造には時間とともに変化が見られています。
高齢化への対応や担い手の確保などが今後の課題となります。
指定野菜制度のメリットとデメリット
指定野菜制度のメリットとデメリットについては以下のように整理できます。
指定野菜制度のメリット
価格安定の確保: 指定野菜の価格が下落した場合、補給金を通じて収入が補填されるため、農家は市場価格の変動による収入の不安定さからある程度守られます。
経営の安定: 安定した収入により、農業経営が安定しやすくなります。特に天候などの不確定要素に左右されずに済むことが大きなメリットです。
集団産地の形成: 指定産地制度により、集団での生産が奨励されるため、効率的な生産体系の構築が可能です。
指定野菜制度のデメリット
栽培条件の制限: 指定野菜は特定の産地での生産が条件となり、農家はこの要件を満たす必要があります。このため、自由度が制限されることがあります。
連作障害: 指定産地では同じ野菜の連作が行われることが多いため、地力の低下や病害虫の多発などのリスクがあります。
高齢化と労働力不足: 指定産地では農家の高齢化に伴い、労働力不足が課題となっており、これが生産量の減少や品質の低下に繋がる可能性があります。
このため、農家はこの制度を活用する際に、その特性を十分に理解し、効果的に対処する必要があります。