国立感染症研究所によると、2018年7月下旬から、首都圏を中心に、風疹の患者が急増しています。
2018年10月3日時点で952人だった患者数は、10月14日時点で1289人に上り、凄まじいスピードで、感染が拡大していることは明らかです。
そこで、風疹(ふうしん)の症状や感染ルート、予防法、風疹に特に注意するべき人、対処法を紹介します。
また、生まれた年の期間ごとの予防接種制度についても説明しますので参考にしてくださいね。
第一章:風疹(ふうしん)とは
風疹は麻疹(はしか)と症状が似ており、また、麻疹より症状が軽いため、「三日ばしか」とも呼ばれています。
風疹の症状や感染ルートをみていきましょう。
1.風疹の症状
風疹にかかると、以下のような症状が表れます。
- 喉が痛い
- 咳が出る
- 熱が出る
- 発疹
- 耳の後ろのリンパ節が腫れる(リンパ節の腫れには、小指の先位の大きさのしこりがあり、押すと痛みがあります。)
風邪のような症状で始まるので、風疹にかかっているとは、自分でも、医者でも気付きにくいです。
症状だけで風疹だと診断することが難しいため、風疹ウィルス抗体検査をして、診断結果が確定します。
大人では関節痛になることもあり、大人が風疹にかかると、子どもよりも重症化するといわれています。
また、出血しやすくなる血小板減少性紫斑(血小板の数が減って紫斑ができる)が3000人に1人の確率で起こります。
2.感染ルート
風疹ウィルスは、体内に入ってから7日程で増殖し、唾液に混じり始めます。
その後、7日程経ってから症状が出始めます。
そのため、症状が出始めて、風疹にかかっていることに気付き、学校や会社を休んで隔離したとしても、
また、ウィルスに感染しても、風疹の症状が出ない人が約15%もいるといわれており、知らない間に、周囲の人に感染させているおそれがあります。
第二章:風疹に特に注意するべき人
妊娠初期の女性が風疹にかかると、お腹の赤ちゃんも風疹にかかり、先天性風疹症候群 (CRS)になる可能性があるといわれています。
単独で発症したり、いくつか発症したりするため、総称して先天性風疹症候群と呼んでいます。
妊娠2ヶ月で35%、
妊娠3ヶ月で18%、
妊娠4ヶ月で8%
といわれており、時期が早ければ早いほど、発症する確率は高くなります。
国立感染症研究所によると、風疹が流行した2012年から2013年にかけて、先天性風疹症候群になった子どもは全国で45人いて、この中の11人が心臓病や肺炎などで、生後1年以内に亡くなったそうです。
妊婦さんは、妊婦健診の初期血液検査に、風疹の抗体検査が含まれているので、検査結果を確認すれば、抗体の有無が分かります。
ただし、病原性を低下させているとはいえ、風疹ワクチンは生ワクチンであるため、抗体がなかったとしても、妊婦さんは予防接種を受けることができず、感染しないように注意するしかありません。
家族全員の抗体の有無を確認し、抗体がなければ、すぐに予防接種してください。
妊娠を希望している女性で、風疹の抗体がない場合は、妊娠する前に夫婦で予防接種を受けておくといいですね。
第三章:風疹の予防法
風疹に一度かかると、ほとんどの人が終生免疫(今後一生涯、その感染症にはかからない免疫)を得られるので、二度と風疹にかかることはありません。
風疹ワクチンとは、無害化したり、病原性を低下させたりした弱毒化ウィルスを培養し、凍結、乾燥させた生ワクチンです。
風疹ワクチンを接種しても、風疹に感染することはなく、風疹ウィルスに対する免疫を得られます。
予防接種を受けているかどうかは、母子手帳を見れば分かりますが、母子手帳は両親が持っていることが多く、自分の手元にある方は少ないと思います。
また、見方が分からない方もいます。
そこで、生まれた年の予防接種制度から、ある程度判断することができます。
★1962年4月1日以前生まれ
定期接種制度はありませんでしたが、ほとんどの人が風疹に感染し、免疫をもっています。
★1962年4月2日~1979年4月1日以前生まれ
中学生の女性を対象に、学校で集団接種をしていたため、女性は免疫をもっていますが、男性は免疫をもっていません。
男性は予防接種を受けましょう。
★1979年4月2日~1987年10月1日生まれ
中学生の男性、女性共に、個別接種を受ける対象になっていましたが、任意で医療機関で予防接種を受ける制度だったので、集団接種に比べて接種率が低くなります。
男性、女性共に予防接種を受けましょう。
★1987年10月2日~1990年4月1日生まれ
幼児期の男性、女性共に、個別接種を受ける対象になっていたので、接種率は高いです。
ただし、摂取回数は定められていませんでした。
★1990年4月2日以降生まれ
男性、女性共に、個別接種を2回受けることになっています。
海外出張の多い30代~50代の男性が主な感染源だったといわれています。
当時の30代~50代は「1962年4月2日~1979年4月1日以前生まれ」に当てはまり、先述したように、中学生の女性を対象に、集団接種をしていた時代で、免疫をもっていない男性が多かったのです。
2018年になっても、30代後半~50代男性で、免疫をもっている割合は75~80%にとどまるといわれており、今年の風疹の流行でも、特に30代後半~50代男性は予防接種を受けるように喚起されています。
また、国立感染症研究所によると、予防接種を1回受けると、95~99%の確率で風疹の免疫がつきますが、言い換えれば、1~5%の確率で免疫がつかないということ。
20人に1人の確率だと考えると、意外に多いと感じるのではないでしょうか?
そして、風疹ウィルスの感染力は、インフルエンザウィルスの2~4倍もあるそうです。
風疹があっという間に流行するのは、このような背景があったのですね。
海外駐在など、長期にわたって滞在する場合には、出国前に予防接種を受けるように推奨されていますが、出張などの短期滞在では推奨されていません。
もし、予防接種を受けずに、海外渡航した場合は、帰国後の体調の変化には、十分に注意してくださいね。
免疫があるか分からない場合、予防接種を受けたかどうか分からない場合は、抗体検査を受けましょう。
厚生労働省のホームページによれば、多くの自治体で、特定の条件を満たしていれば、風疹抗体検査を無料で受けることができるそうです。
また、抗体の有無に関係なく、予防接種は受けられるので、念のために受けておくのもいいですね。
予防接種を2回受ければ、風疹の免疫を99%の確率で得ることができます。
風疹の予防接種は、内科などの医療機関で受けられます。
第四章:風疹の対処法
風疹にかかった可能性がある場合は、まずは病院に連絡してその旨を伝え、指示を仰ぎましょう。
働いている方が風疹と診断されたら、無理に出勤せずに、上司や医師と相談して、会社を休んでください。
他の妊婦さんに感染するリスクがあるので、産婦人科に直接行くのはやめましょう。
風疹ウィルスに直接働きかける治療薬はありません。
発熱している場合には解熱鎮痛剤を、発疹がある場合には塗り薬が処方されるなど、その症状に合わせて個別に対応する治療法を行います。
自宅でできるケアとしては、発熱している場合には脱水症状にならないように、こまめに水分補給しましょう。
また、発疹がある場合には痒みが増さないように、汗をこまめに拭き取ったり、服をこまめに着替えたりするようにしましょう。
まとめ
風疹の症状や感染ルート、予防法、風疹に特に注意するべき人、対処法を紹介しました。
風疹は風邪のような症状で始まるので、症状だけで風疹だと診断することが難しく、風疹ウィルス抗体検査をして、診断結果が確定します。
風疹ウィルスの感染力は、インフルエンザウィルスの2~4倍もあり、あっという間に広がります。
風疹の予防法として、最も有効なのは予防接種(風疹ワクチン接種)です。
風疹の免疫をもっている割合が75~80%にとどまるといわれている30代後半~50代男性、また、妊娠を希望している夫婦は積極的に予防接種を受けましょう。
既に妊娠している場合、予防接種を受けることができないので、自分が過去に予防接種を受けているかどうか、抗体があるかどうかを確認し、受けていなければ、また、抗体がなければ、出産後すぐに受けてください。
妊婦さんが風疹にかかった可能性がある場合は、産婦人科に直接行くのではなく、かかりつけの産婦人科の医師に、必ず電話で相談してください。
お腹の赤ちゃんの誕生を心待ちにしている妊婦さんにとって、風疹は本当に怖い病気です。
予防接種は費用も時間もかかりますが、風疹を周囲に感染させて迷惑をかけないよう、
また、妊婦さんと赤ちゃんに悲しい想いをさせないよう、予防接種を受けてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。